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東京地方裁判所 昭和54年(ワ)9177号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

二ところで、前記各証拠及び被告本人尋問の結果を総合すると、次の事実を認めることができる。

1 原告は、職業安定所の紹介で経理経験者であるという訴外亀山を財務部経理課員として採用することとしたが、同訴外人の前勤務先及び前々勤務先はいずれも倒産しており、同訴外人の勤務状況等の問合せをすることはできず、また、同訴外人に横領等の前科のあることは知らなかつた。

2 訴外亀山の実姉である訴外鈴鹿絹子は、夫に内緒で夫が代表者である訴外会社(ライター部品製造業)の下請人(ライター組立)の被告に訴外亀山のため身元保証を依頼したが、訴外亀山に横領等の前科のあること及び同訴外人が原告の経理課に勤務することのいずれも被告に告げなかつた。被告は、前認定のとおり原告会社に電話で問い合わせたところ、これに応待した者から原告会社では訴外亀山に採用当初から金銭の取扱いをさせることはないと言われたこと及び取引先の代表者の妻からの依頼である以上断り切れないと思い、本件身元保証を引き受けた。

3 原告は、現金の動きの激しい不動産関係の会社であるが、財務部内での現金の授受、管理等の事務及びその監督が必ずしも厳格でなく、採用直後の訴外亀山も営業担当者からの現金の引継ぎを直接受けることがあり、本件の横領行為は、いずれも同訴外人が営業担当者から現金を引継いだ機会に行われたものであり、同訴外人が原告に採用された後一か月から三か月弱の間の出来事である。

4 被告は、原告から本件損害賠償の催告を受けたので、訴外会社代表者に事情を問い合わせたところ、代表者は被告が内緒で身元保証をしたと言つて怒り、以後被告に仕事を下請けさせなくなつた。そのため、被告は職を失い、妻をパートタイマーとして働かせることになつたほか、自らは息子の仕事の手伝いをするなどして生活せざるを得ない状態となり、一か月の収入は八万円程度である。

三以上認定の訴外亀山の採用の経過、原告会社における金銭の管理・監督の状況、本件身元保証契約締結の経過、本件に伴う被告の生活状況の変化等一切の状況を斟酌すれば、本件における被告の原告に対する損害賠償責任は、金二〇万円をもつて限度とするのを相当と認める。

(久保内卓亞)

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